cologne 名詞 <colere >9
=========* 註 *=========
cologne は、eau de Cologne (オーデコロン) の短縮であるが、本来はドイツの古い都市ケルン
(ドイツ語で Köln、フランス語と英語で Cologne )のことで、「植民地」を意味するラテン語 colonia が語源である。
この都市の起源は、紀元前38年頃、ゲルマン民族の一派ウビイー族が、ローマの支援を得てライン左岸に建てた都で、
「ウビイーの町」とか「ウビイーの保護地」などと呼ばれていた。紀元後50年、ローマ皇帝クラウディウスは、この町を、
様々な特権を持つ最高ランクの植民地に昇格させ、自分と妻アグリッピーナの名を冠して Colonia Claudia ara Agrippiensis 、
略して Colonia Agrippiensis とした。歴史家タキトゥスは『ゲルマニア』のなかで、この植民地の住民が、ゲルマン人であることを
恥とはしないが、アグリッピーナ人と呼ばれるのを喜ぶと記している。この町は、長い間ローマ帝国の重要軍事拠点であり、ライン川商業の中心地でもあった。
ところで、アウグストゥスの孫という出自を誇るアグリッピーナは、権力欲の塊のような女性だったと伝えられている。紀元54年、アグリッピーナは夫である
皇帝クラウディウスを毒殺し、
前夫との間にできたネロを皇帝にする。ところが、ネロと帝位を共有しようと策謀したため、警戒したネロによって殺害されてしまう。この「稀代の悪女」の
名を嫌ったためか、
Colonia Agrippiensis は、その名前にアグリッピーナをとどめなかった。アグリッピーナが、語り継ぐに値する美徳の持ち主であったなら、
オーデコロンも別の名前になっていたかもしれない。