demagogue 名詞  dēmos1  agein 表1>1
  =========* 註 *=========
demagogue の語源のギリシャ語 dēmagōgos は、字義的には「民衆を導く者」である。この語は、最初は字義通りに「民衆の指導者」 の意味で用いられ、黄金時代のアテネに「事実上の第一人者」として君臨したペリクレスも、この名で呼ばれた。

ペロポネソス戦争開始後、指導者ペリクレスが病死すると、アテネは、資産防衛の立場から平和を望む富裕層と、戦争を推進し勝利の利益を希求 する貧困層や商工業者に二分された。この時、大衆の好戦感情に取り入り、これをあおりながら勇ましい主戦論を唱える政治家たちが現れ、 彼らも大衆に拍手喝采されて dēmagōgos と呼ばれた。甚大な犠牲を生み出しているにもかかわらず、スパルタとの講和交渉を決裂させたり、 拒絶したりした「指導者」たちは、結局は、同時代の歴史家からも敗戦の大きな原因を作ったと断罪された。

こうして、 dēmagōgos の意味は、古代ギリシャにおいて既に「扇動政治家」となった。これは、一部の無定見な政治家に 起因する偶然的な出来事というべきか、民主主義の本質に根ざした必然的な発展だと言うべきか。 dēmagōgos は、 ついに本来の輝かしい意味を取り戻すことはなかった。唾棄すべき意味をもつ語として遠く極東日本の言語にも定着しているが、その語源に 思いを馳せる人は少ない。