ラテン語 munus <*mei- (1)
表4>
=========* 註 *=========
ラテン語 munus は兵役や納税のような「義務」のことであるが、この語には、「神々や死者に捧げるもの」という意味もあった。
古代ローマにおいては、キルクス (circus 競走場) で行われる戦車競争も、神々や死者に奉納する神事であった。
剣闘士の試合も munus で、死者の霊を慰めるために
人間の血を流すという信仰が起源とも言われる。
敗者になれば喉を切られて殺されるという血なまぐさい見世物は、為政者が民衆を支配するための巧妙な手段でもあった。
血に飢えた民衆に、「パン」と共に、残酷で魅力的なショーを提供するのは、権力者の「義務」でもあり
「贈物」でもあると考えられていた。 munus は一般的に「贈物」や「好意」を意味する語でもあり、動詞 munerari も一般的に「贈与する」
の意味で使われた。