salary 名詞 *sal-2
=========* 註 *=========
salary の語源のラテン語 salarium について、多くの辞典や解説書が、 「古代ローマで、食塩購入 のために兵士に与えられた金」 と説明している。 これに対して、逸見喜一郎 『ラテン語のはなし』 は、 salarium が兵士に与えられたものであることを示す文献はないとしている。

Oxford Latin Dictionary も、主要な意味は ”A regular official payment to the holder of a civil or military post” としていて、兵士への塩購入金の用例はない。

風間喜代三 『ことばの生活誌』 は、本来は兵隊などが塩を買うためのお金であったが、時代とともにいろいろな salarium があったらし いとしていて、かなり高額の俸給の例(3世紀)をあげている。同書は、 「(様々な salarium の)用例から、その背景にあったと思われる 塩との直接の結びつきは認められない」 とも書いているので、 「兵隊などが塩を買うためのお金」 というのは仮説であろう。

以上から、ラテン語 salarium の、文献上確定している意味は、 「ある程度の地位の者に与えられる定期的な俸給」 のようだが、 これは今日の英語の salary の意味に近い。

ところで、前掲 『ラテン語のはなし』 は、文献が残る以前に、給料を 「塩代」 とでも婉曲にいったのかもしれないとも書いている。 もしそうなら、 「この度はアフリカの知事になられるそうで、さぞかし俸給もよいの でしょうな。」 「いやいや、ほんの塩代、サラリーとでも呼ぶべき額ですよ。」 などという会話もあったのだろうか。